今度出すリック・リンチツの『あなたも私もいない』(No You and No Me)は、最初から最後まで「個人がいない」といふことを語ってゐて痛快だ。とても面白い。発売を楽しみにしてゐて。発売を楽しむ「個人」もゐないのだが。楽しみそのものはある。
上記の本とは直接関係ないが、世の中には幻想で生きてゐる人が二つに分類される。
一つは、「何でもできる。何でも可能である」といふ幻想で生きてゐる人。
引き寄せ系の人がはまる幻想だ。
現実には、何でも可能ではない。100mを3秒で走れない。
二つめは、何でも可能ではないと思ってゐるが、想いの世界に浸って生きてゐる人。
大部分の人は、この分類に入る。常に何かを想って、その想ひに浸ってゐる。
リアリティを生きてゐない。
そして、それらに属せず、幻想で生きてゐない人が覚醒して生きてゐる人だ。
覚醒して生きてゐる人は、「個人」で生きてゐない。そこに「個人」はゐない。
「それ」が「それ」として生きてゐる。